いつか街で子供を連れた幸せそうな桃子に出会ったら

巡回早貴で教えてもらった良スレ

http://ex22.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1177606218/


自分も書いてみましたが、上に書くほどステキでもないので、ここにww

お暇な人だけどうぞ


毎日のように、娘は目を輝かせながら、
「おかぁさ〜ん、今日のさっちゃん家のお弁当はねぇ...」
と自慢している。
娘なりに気を遣っているのか、そういうのを作ってとおねだりしない所が健気で、人様に自慢できる所だ。


所謂、親バカっていう類のものであるが、さっちゃん家のお弁当がどんな弁当なのか、一度食べてみたいと思うこともあった。


そんなある日、娘の通っている幼稚園で運動会が開かれた。2年連続で雨天順延のため、過去の運動会は平日に開催されていた。多くのお父さんたちにとっては、初めての運動会の参加。にわかカメラマンが多く出現する。


お昼時、きれいに晴れ渡った空の下、レジャーシートの上に広げられた、お弁当。どの家の子どもたちも喜びに満ち溢れた顔をしている。我が家は、さっちゃん家の隣でお昼を共にすることになった。


あまり人様の家の弁当を眺めるのは失礼になると思いつつ、ちらちら眺めてみる。遠めに見ただけで、カラフルで食欲をそそるようなお弁当である。


「あのぅ、もし、よろしかったら、いかがですか〜?」
さっちゃん家のおかぁさんの声は、ずいぶんと甘い声で、いかにも優しいおかぁさんって感じだ。単純な料理にも、小さな一工夫が加えられていて、相当熱心に料理を勉強したことが伺える。料理好きの枠をはるかに超えているのである。


娘のためにと思い、さっちゃん家のお弁当をビデオに撮らせてもらう。お弁当を映し、そして作られたおかぁさんにビデオを向ける。そこには、慣れた感じの笑顔でビデオに映るおかぁさん。


ここまで完璧なものを見てしまうと、アラを探したくなるものである。若干気になったのは、きゅうりの量が多かったのと、箸の使い方である。まぁ、これらは些細なことではあるが...。


午後になり父兄の参加する種目も出てきた。私が参加するのは障害物競走で、ピンポン玉をお玉に乗せ走ったり、平均台の上を走ったり、バットを頭に付けてグルグル回ったりする。さっちゃん家のおかぁさんも、この種目に参加するようだ。


おかぁさんは、さっちゃんに笑顔で手を振るが、時折、真剣な目付きをしたりしている。負けず嫌いだが、完璧なおかぁさんでもあろうとしていることが窺い知れる。


さっちゃん家のおかぁさんは私のひとつ前の組である。ピストルの音がなり、一斉に駆け出す。手を横に振りながら、バタバタと走るおかぁさんが妙にかわいらしく見えてしまった。ピンポン玉は、すぐに落としてしまうし、お玉を持つ手は妙に小指が浮いている。平均台だけは、妙に速く駆け抜け、また、バットを持つ手も小指が立っている。バットの周りをゆっくりと回ると、すぐにパタンと転び、全くもって立ち上がれず、よろめいている。


この光景で、全てを思い出した。



今まで気づかなかったのが不思議であるが、間違いない。


やがて、私の組の番になったが、涙でピンポン玉が見えず、ダントツのビリ。


娘は、かなり落胆しているようだったが、帰り道、無理して違う話題をしている所が健気だった。私は、自分の情熱の全てを注いだ昔の自分を思い出し、今の自分はあの頃より成長しているのか自問してみた。さっちゃんのおかぁさんのお弁当を食べ、確実に成長している人と自分を比べてしまい、若干自分を責めていることに気が付いた。一方、「さっちゃんのおかぁさんは、昔は料理が下手だったんだよ」と口を滑らしそうになってしまったが、上手く止められたのは幸いである。